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Satoshi Kitamura![]() ーーきたむらさんをご存じない方の為に、簡単に自己紹介と絵本作家になった経緯を教えてください。
子供の時から絵は好きだったんですけれど、特別絵をやろうと思ったことはなかったです。好きでやっているうちに、十代の終わりくらいに、何となく仕事になっちゃったんです。 きっかけは、ある友達がデザイン会社でデザイナーをやっていたんですね。ある時その会社に出版の仕事が入って、それを手伝ってくれないかって頼まれました。もうその頃学校を辞めていて将来何するか未だ分かっていなかったので、とりあえずやってみることにしました。その後そのデザイナーと広告とか雑誌とかの仕事を一杯やるようになりました。しばらく忙しくやっていて、少しお金が貯まったこともあり、また余りにも忙しくなり過ぎてくたびれちゃったんですね。あと何となく外国行ってみたい、英語をちゃんと覚えたいという気持ちもあったんです。で、とにかく仕事を辞めてイギリス行きました。 イギリスでしばらく過ごしているうちに、ふと本のアイデアみたいなのが浮かんだんです。それを描いてイギリスの出版社に送ってみたら、意外と反応が良かった。それで色々な出版社を回ってみました。でも当時は景気が悪くて、新人には仕事はないって雰囲気だったんです。だからそのうち、「これは無理かな、もう帰ろうかな」と思い始めたんですね。そのころお金も少なくなってきたから、あるギャラリーに絵を売りに行ったんです。そうしたら、ギャラリーの人が僕の絵を気に入ってくれて、展覧会やらないかって誘われて、小さいけれど個展をやりました。 その個展のオープニングにイギリスで知り合った人達を招待したんですけれど、その中にアンデルセンプレスという出版社の社長のクラウス・フルーガー氏がいました。ちょうどそのころ作家のハーウィン・オラムさんが『Angry Arthur』の原稿をアンデルセンプレスに持ってきていました。クラウスはそれを読んで僕に見せてみようと思ったんでしょう。その原稿を持って個展のオープニングに来ました。その晩部屋に戻って読んでみると、凄く面白い作品でした。それで、2週間くらい掛けて下書きを描いて、彼のところに持って行ったら、気に入ってくれてすぐ仕事になったんです。3ヶ月くらいで仕上げました。出来上がったころ、ちょうどビザが切れちゃったから、日本に帰りました。そして以前の広告の仕事をまたやり始めたというわけです。 そうしたら、次の本の原稿をイギリスから送ってきました。他のイギリスの出版社も原稿送ってきたりして、「ひょっとして、これ仕事になるのかな」って考え出し、様子見がてらちょっとだけイギリスに戻ったんですね。そうしたら偶然この『Angry Arthur』がマザーグース賞を取ったんです。偶然僕が戻った時に授賞式がありました。マザーグース賞っていうのは絵本の絵描きの新人賞なんですよ。だから、受賞のおかげで運良く業界に名前が知れたので「あ、これは仕事になる」と思いました。でも当時はファックスも無いし、国際電話も高くてかけられない時代だったので、全部のやり取りが手紙だったんです。もの凄く不便でした。クラウスが「イギリスで仕事する気があるなら労働許可とってみよう」って言ってくれたんです。それで、イギリスに住むことになりました。それから30年位イギリスにいましたね。 ーー絵本を作る上で大切にしていることは何ですか? 普通のことですけれど、きちっとやる、手を抜かないっていうのは一番大きいですよね。あとはやっぱり、他の人が書いた原稿なら、とにかく読む。何度も何度も読んで徹底的に理解する。文章につけるためのイラストレーションを描く場合に一番大事なのは、その文章をとことん理解して、そこから色んな想像をするという事です。そういうことが面白いし大事だと思います。 ーーでは実際にイラストを描くときは、文章を読み込んできっちり考えが固まってから一気に描き上げるというスタイルなのでしょうか? 一気に描き上げるというよりは、文章を読みながら沢山の下書きやスケッチみたいなものをやることで、だんだん煮詰まってきますね。例えば、絵本は大体32ページ程度です。ということは描ける絵の数はものすごく少ない。だから、最適な絵を描かなきゃいけません。物語の中の各場面のストーリーを視覚的に一番よく実現させなきゃいけないわけだから、そこに辿り着くまでには一杯描かなきゃいけないわけです。 だから、一冊の本を描き終わると、下書きとかがやっぱり膨大な数になってますね。それから、本書きのつもりで描いたものが、出来上がってみるといまひとつだったからやり直しっていうのも結構多いです。 ーーMonkey Business誌上にて『Variation and Theme』という短編漫画を発表されていますが、漫画を描くことになったきっかけを教えてください。 これは、経緯があるんです。 リオノーラ・キャリントンというのはイギリス人の画家で、小説家でもあります。彼女が書いた短編小説で『初めての舞踏会』っていう不思議な物語があるんです。それを翻訳家でアメリカ文学者の柴田元幸さんが日本語に訳して、「これに絵を付けてみないか」って僕に渡したことがあったんですね。最初は何枚かイラストを描こうぐらいに思っていたんだけど、文章を読んでいるうちに、「これ漫画になるかな」と思ったんです。それで僕なりに漫画化してみて柴田さんに見せたら、彼が編集する「Monkey」という雑誌に掲載したいって言ってくれたんです。でも、掲載するには著作権者から許可を取らないといけない。その時にはキャリントン自身は亡くなっていたので、その著作権管理者から掲載許可を取ろうとしたんですが、なかなか返事が来ない。もう締め切りが迫ってきたんで、これは諦めようかということになったんです。でもその分ページが開いちゃうから、代わりのアイデアとして僕がこの『Variation and Theme』を急いで描いたんです。 『Variation and Theme』はチャールズ・シミックというアメリカ人の詩人が書いた詩から発想を得たものなんです。だから、掲載する為にはそのチャールズ・シミックの許可を得なきゃいけない。そこで僕は最初から英語で描いたんですね。許可が出たら日本語にしよう思っていました。そうしたら、ギリギリの所でそのキャリントンの著作権管理者から許可が下りたんです。それで結局、予定通り『初めての舞踏会』を「Monkey」に掲載することになりました。だからこの『Variation and Theme』は浮いちゃったんです。 ところで柴田さんはテッド・グーセンさんという日本文学の専門家と共同編集で「Monkey Business」という現代の日本文学と英語文学を扱った英語の雑誌を年に一回出しています。柴田さんがその「Monkey Business」にこの『Variation and Theme』を載せてくれました。普通は”Theme and Variations”、つまり”主題と変奏”です。でもここで逆の”変奏と主題”になっているのは、最後のページに載っているチャールズ・シミックによる詩が「主題」で漫画の方はその「変奏」という意味なんです。つまり詩を自由に解釈して発想した漫画です。 ーー絵本と漫画で制作アプローチの方法は違いますか? そうですね。絵本と漫画って大分違ってますね。漫画っていうのは、簡単に言うと戯曲を書くみたいなところがあるんです。劇なので、会話で物語を進めていきます。でも絵本は、普通短い文章と絵だけだから、殆ど詩みたいな部分があるんです。絵本のものの考え方、作り方でやっていると、漫画とは体質的に違うのでなかなか難しいところがあります。ただ僕は、元々漫画が好きだから描きたいとは思っていました。それで最近になって、少しずつ実験しているって感じです。 ーーきたむらさんは紙芝居も制作されていますが、絵本と紙芝居では制作の時の考え方も違いますか? だいぶ違いますね。紙芝居は、ある程度距離のあるところから見るわけだから、絵がかなり単純じゃなきゃいけませんよね。細かいことは出来ない。しかも、一枚の絵を見せて長々と喋っていちゃダメなんです。スピードがないとみんな飽きちゃうから。でも絵本っていうのは、眺めているうちに色々なものが見えてきたり、案外ゆっくりとした読み方をしますよね。 僕の場合は海外の本のフェスティバルに招かれた時などに紙芝居をやることが多いのですが、どこの国でもみんな瞬間的に紙芝居の面白さが分かるみたいです。 ーー万人にわかる面白さってことですね そう、本当にそんな感じ。あと大人も喜びますね。去年「Monkey Business」のイベントでアメリカに行った時に、大学やニューヨークの本屋さんを回りました。その時初めて子供がいないところで紙芝居をやることになったので、大人向けの紙芝居を描いてみようと思い、『外套』を作りました。この『外套』がニューヨクで結構受けて、また柴田さんが気に入ったみたいで「これMonkeyに出したいから漫画にして」って言われたんです。そういうわけで『外套』の漫画を描きました。 ーー紙芝居を漫画にされたんですね。では紙芝居と漫画とでは読むスピード感や間合いが似ているのでしょうか? 意外と似ているかもしれないですね。紙芝居も早いけど、漫画もみんな読むとき早いでしょう。 ストーリーも大事だけれど、漫画はやはり絵の良さが決め手です。ストーリーがどんなに面白くても絵がつまらないとダメなんですよね。 ーーそうなんですね。では、好きな漫画や漫画家の方はいらっしゃいますか? アメリカの漫画でフランク・キング作の『ガソリン・アレイ』が好きですね。これは20世紀前半に書かれた一種ホームドラマ的な漫画で、すごく綺麗なんです。あとは、ジョージ.ヘリマンの『クレージー・カット』っていう漫画も凄くシュールで好きですね。ベン・カチャーっていう作家の漫画もすごく面白い。ただ彼の作品は、世界でこの面白さを分かる人はそんなにいないかもしれないって位特殊ですけれど。 ーー最後になりましたが、Black Hook Pressでは皆さんに、お仕事中やリラックスするときにどのような音楽を聴いてるかお伺いしています。お気に入りの一曲があれば教えてください。 音楽は結構好きですね。クラシックも好きだけど、ジャズが多いですかね。ジャズだと、オーネット・コールマンとかジミー・ジョフレを聞きます。ジョフレの音楽は一見とても地味なんだけど、実はかなり前衛的なことをやっていた人なんです。でも彼があんまり受けなかった1つの理由は、彼のバンドはドラムがいないんですよね。だから、少しノリが悪いように聞こえるのかもしれない。でも本当はすごくスイングしているし飽きのこない音楽です。 For those who don’t know about you, could you introduce yourself and tell us why you became an artist of children’s picture books?
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